設楽農園

代々続く、米・きゅうり・ネギ・里芋農家 設楽哲也さん。農業、農作物の魅力や可能性を全国の人に伝える活動が注目されています。設楽さんのストーリーをご紹介いたします。

実家は農業、でも夢は・・・

代々続く農家の長男として生まれ、必ずしも自主的とは言えない中、幼い頃から家の手伝いをしながら、ただ漠然と自分の中で「自分が家を継ぐんだ」という気持ちを持っていました。

実は、私自身ずっと「教師」になりたいという夢を持っていたんです。高校に進学する時、農業の道か、大学進学の道か、とても悩みました。結果、教師になる道を選択し、大学へ進学しました。大学には様々な年齢層や考え方を持った人たちが集まり、それまで教科書が全てだと思っていた私は衝撃を受けました。それまで教師一本でしかなかった考えが、もっと色々なことをやってみたいという考えに変わりました。

大学卒業時、家族には『親父が60歳になるまでには帰ってくる』と約束し、その後は5年間旅行会社に勤めました。会社での仕事は楽しいものでしたが、教師への熱は冷めずにいました。そんな折、県内の小学校に講師として勤めるチャンスがあったので、会社を退職し、1年間だけ教師になりました。その1年間で『子ども達にもっと伝えたい』『伝えるからには半端な知識では駄目だ』と改めて強く思うようになりました。この思いは、教師・農家どちらにとっても同じく大切なことだと気づき、私が29歳、父が54歳の時、本格的に就農しました。

写真)右から(本人:哲也さん、祖父:長久さん、父:幸一さん)

農業はカッコイイ!?

いざ本格就農をしましたが、知識も技量も不十分だったため、農業収入も不安定でした。人手が足りず臨時的に友人に農作業を手伝ってもらっていたのですが、その友人が私たち家族の農作業を見て、「カッコイイ!」と言ったんです。毎日自分が見ていたこの光景が「カッコイイ」だって?その発言に目からウロコならぬ、耳からウロコでした。試しに、作業日誌としてFacebookに日々の作業の様子をアップしました。するとネット上からも同じように「キレイ!」「スゴイ!」などの反応が返ってきたんです。自分の家族は、そんな凄いことをやっていたのかと誇らしくなると同時に、就農した自分の仕事にプライドと責任を持たなくてはと感じるようになりました。

10本も100本も・・・

私が育てている農作物は、主に「米」「きゅうり」「ネギ」の3品目です。スーパーで売っていない所は無い、といえるほどポピュラーな作物であり、それだけ価格競争が厳しい世界でもあります。須賀川市には「はたけんぼ」という大型直売所がありますが、そこでは価格競争に負けると思い、参入しませんでした。
売り込む先はどこだろうと考えたとき、行き着いた場所は飲食店でした。スーパーや直売所に卸す際は、小分けの包装が必要です。しかし、飲食店では、コンテナ単位でドンッと納品できるため、包装代が省けます。運ぶ労力が同じなら、10本買ってもらうより100本買ってもらう方が良いですよね。
そこで「きゅうり」「ネギ」といった大量納品が見込みにくい商品をどうしたらたくさん飲食店に買ってもらえるのかを考えるようになりました。

料理は料理屋、キュウリはキュウリ屋。〜農家ライブの始まり〜

どうしたら飲食店にたくさん商品を買ってもらえるだろうか。その問いに対する答えは単純でした。消費量を増やせば良いんです。さらに言ってしまえば商品を主役としたメニューを作ってしまえば良いんです。

当然ながら、私は農家なので料理は専門外です。そこは適材適所。きゅうりの性質を知り尽くしている料理人と協力し、美味しい新メニューを開発しました。これらの料理をお店で食べるだけでは勿体ない、そこで考えたのが「農家ライブ」です。料理を味わうだけでなく、私が「きゅうり」に関する様々な小噺を農家の視点から話します。お客様は、今まで知らなかった「きゅうり」を五感で新発見・再発見できるのです。
一つの農産物に対して農家が、料理人が、他専門家が多角的にアプローチしていく。これが「農家ライブ」の始まりでした。
農家ライブで話す内容は、今まで作業日誌で積み上げてきたものがベースにあります。話し方を変えているだけで、子どもからお年寄りまで話す内容は全く変わりません。消費拡大のために始めたライブですが、いつもお客様からのやり取りの中で、仕事への気づき・振り返りが出来ます。回数を積むごとに商品の品質向上につながっています。

農家のファンではなく野菜のファンに。

農家ライブのほかにも度々イベントをさせてもらっていますが、それで本業がおろそかになっては身も蓋もありません。自信をもって美味しいものを作らなくては、人前で話しても説得力はないし、お金を取るなんて出来ません。何より優先すべきは、毎日の農作業です!

我が家の野菜が一番です!なんて言葉をよく聞きますが、ナンバー1は生産者ではなく、消費者が決めるものだと思っています。むしろ、我が家の野菜を食べて、「今まで苦手だったけど、初めて食べられた!」と言ってもらったほうが感無量ですよ!

これからも、『農業はカッコイイ!』と胸を張って伝えていきます。

 

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